劇場での「尻叩き」
翻訳掲載いたします。
この記事「A Voice in the Corner」に掲載されていたもので。
「尻叩き」は、舞台芸術の中でも最も一般的なものです。
1920年代から30年代にかけてのロンドンの舞台は、劇中に「尻叩き」のシーンで溢れかえっていました。
今日でも多くの前衛的な作品(例えばシェイクスピアの尻叩きなど)には、注目を集めるために「尻叩き」のシーンが含まれています。
これには理由があるかもしれません。
19世紀には(世紀を見る人にとっては、それが慎重さを美徳とした最後の一歩手前の時代のことです)、「尻叩き」はしばしば演劇の古典的な見せ場の一つでした。
映画や舞台では「尻叩き」がセックスの代用品として使われていたことが多く書かれていますが、当時は「尻叩き」のための木の棒が「尻餅」と同じように演劇の古典的な見せ場の一つとして用いられていたのかもしれません。
クラッパー・スティックとは、軽量の木片を2本使ったもので、「尻叩き」に使うと軽い叩き方にも関わらず、大きな音がしました。でも痛くはなかったようです。
どうやら、ドルリー・レーンにあるいくつかの演劇では、コーラスガールの非公式な躾として「尻叩き」にこの木の棒が使われていたようです。
例えば、リハーサルに遅刻した女の子を呼び出して、みんなの前で監督の膝の上に乗せて「尻叩き」をしてもらうという悪ふざけがありました。
女の子は、これがただの恥ずかしい「お仕置きごっこ」だったのか、それとも木の棒をより頑丈で痛みを伴うパドルに代えられて、行われたのかは、わかりません。
また、演奏中には、ジョークや、あるいは演者やコーラスガールの尻を叩いて一列に戻すために、しばしばこの木の棒が用いられたようです。
1950年代のコーラスガールの一人が回顧録『シアターデイズ』の中で回想しています。
「私たちがやっていたちょっとした寸劇では、みんなが一人ずつ隣の人の方を向いてお尻を振りながら踊るというものがあったのを覚えているわ。でも、私は列の端っこにいたので、最後に屈んでお尻を突き出し、お尻を叩かれなければならなかったのよ。その後、私はびっくりして飛び上がることになっていたんだけど、私はその時、間違って主役の男性の顔を平手打ちしてしまったのよ。」
「拍手喝采が起こったので、これは大成功したわ。ただ、このシーンが大好評だったので、このシーンの最後に顔を打たれた主役の男性が私を捕まえて、膝に乗せてお仕置きをする場面が追加されてしまったの。それは木の棒で私のお尻と叩くというものだったのよ。この演技は好評で毎晩行われたわ。そして最後の夜を迎えたの。最後の夜は千秋楽ということで、今まで悪戯をしてきたいけない私をお客様の前でしっかりとお仕置きするために、木の棒じゃなくて、パドルで打たれることになっていたのよ。だから私は一計を案じて『よし、今日こそは』と、タイツのお尻ところにパッドを入れたのよ。」
「私が彼の膝に身をかがめ、お尻を叩かれると、いつものような大きな音ではなく、鈍い音がしたのね。 それを聞いた主役の男性は、パドルを使わず、手で私のお尻を叩き始めたの。すると当然、彼は私のお尻にパットが入っていることに気づいたわ。『それ見た事か!』と満足げに笑う彼は、パッドの中綿を弄り出し、私のタイツのお尻からピエロ風に引っ張り出すというコメディを披露して、客を喜ばせたわ。もちろんこのアドリブに演者も大喜びよ。そして、とうとうパッドは中綿はなくなってしまったの。彼はパドルは使わなかったものの、お客の前で私の薄くなったタイツのお尻を、不正をしたお仕置きも兼ねて、たっぷりと平手で叩いたのよ。彼の平手打ちはとってもいい音がして、それににとっても痛かったわ。 私の叫び声は劇場中に大きく響き渡って、叩かれるたびに歪む私の顔とお客様に向けられた踊るお尻は見応えがあっと思うわ。舞台上で行われたリアルなお仕置きにお客様も大喜びよ。でも何日も座れなかったわ。」
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