紳士の印
※以前、pixivFANBOXに公開したものです。
ヴィクトリア朝時代においては、女性(尻)についた痣は、とてもデリケートに扱われていたようです。
蚯蚓腫れや赤い腫れは、状況によっては仕方のないこととされましたが、黒や青、紫色に内出血した傷は「残酷な行為の証」と見做されることもありました。
ある高名な医師は、妻を叱るときには、他のどんな道具よりも「スリッパ」を使うことを推奨していました。それは「柔らかい革は、『尻』に見苦しい傷跡を残さないから」という理由でした。
しかし、どうしても杖笞を使わなければならない場合には、「食い込みを防ぐ」ために、肛門に生姜のプラグを差し込むことが提唱されていました。
それは尻に刺さった生姜のプラグがあることで、杖笞の当たりが薄まり、アザが深く入らないといった効果があったようです。
「尻叩き」特に杖笞による折檻の前段階として、懲罰的な浣腸の施術が効果的であることは、当時の立派な出版物や医学雑誌にも掲載されていました。
19世紀後半、英国では妻を笞打つことは違法とされていましたが、使用人や扶養家族である娘たちにはその法律は適用されませんでした。
そのため、女性を折檻する際の正しい手順については、別の形が検討されました。
家庭教師のためのマニュアルでは、16歳以上の若い女性に限り、「バトラー(羽子板のようなパドル)による」尻叩きが提唱されています。
このマニュアルでは、「若い女性の尻に笞が食い込まないようにしなければならない、なぜなら食い込みがキツいと酷く見苦しい笞跡を尻に残す事になりやすいからだ」と指摘しています。また、この記事でも、予防のための健康的な方法として「生姜のプラグ」を提唱しています。「実際にこの方法は、矯正が必要な女性に使用することで効果的である。」と述べています。
もちろん、最も一般的で受け入れられる折檻の方法は白樺(バーチ)でした。
この方法は、深い傷をつけず、かすり傷程度で済むため、「紳士が行う女性への杖笞による尻叩きの代替手段」として広く受け入れられていました。
しかし、『Englishwoman's Domestic Magazine』誌で広く議論されているように、白樺(バーチ)はほとんどの若い女性、特に16歳から19歳の女性には過酷すぎるとよく言われていました。よって、スリッパによる尻叩きが「甘すぎる」と考えられた場合には、「軽い杖笞を採用する方が良い」ともされていました。
ここでも「笞」の良さが語られましたが、不思議なことに、そのような折檻を加えた効果についてはほとんど触れられていません。
要するに、紳士であれば女性に痣をつけたりすることはいけない事ではあるが、女性のその不幸な運命を回避するための方法は存在せず、ただ彼女たちは運が悪かっただけだということで解決しようとしているように思えます。
最後に、痣を気にしていたのは男性だけではなかったことを記しておきます。
レディ・モートンは若い友人への手紙の中で、夫からの「妥当なお仕置きや折檻」は「あなたを傷つけない限り」受け入れるべきだと語っています。
また、コンプトン・リーブス夫人は、夫からの折檻を受ける場合に、「白樺(バーチ)による尻叩き」ではなく、家庭教師のように「浣腸」や「プラグ」によるお仕置きを懇願していたことを日記に書いており、彼女もまた、自分の美しい白いお尻に見苦しい痣を残さないように注意していたことが窺えます。
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